ど素人! の 短歌

 



老いて観る雲間の月の仄かさも暑さ残れる秋の夕暮れ
見えぬ目を見開き吾の叱責を涙を溜めて聞く娘よ憐れ
吾が友の御霊宿りし石鎚の峰間の雲を照らす月かも
紫陽花の色は移りて人の世も心哀しく寂しきものと
暑さにも負けず忙しく働ける妻の姿にオロオロとせり
老人は痛みに夜も眠れぬも手術せぬまま朽ち果てるのみ
久々に猪口一杯の酒に酔い心楽しき秋の夜長は
前世の因果が今と悟りたり老いたるこの身妻子や如何に
秋冷の霧峰に仄か光射し朧に揺れる父母の顔見し
寒さにも炬燵に入らず手袋を繕う妻は平気と笑う
障害の吾が娘の末を案じつつ妻の病に我が身を呪い
ニャァニャァと小鳥をくわえた家の猫得意げに俺の足元に置く
夢見たり天から落ちる桃色の大蛇の上に車乗り上げ
幼子の声に似たり青鳩を森に分け入り探せど見えず
池の端のヤブサンザシの赤き実を見つめて心穏やかなりし
山里に初霜降りてその夕べ野良猫現れ餌ねだりし
前世の罪を此の世で拭いしや償えぬままに来世もまた
枯れ草を繕いて寂しリンドウに己が姿を重ねおるなり
吾が妻と共に老け行く嬉しさよされどすまぬと手を合わせおり
晩秋の闇に潜みしコオロギの寂しき声に吾も寂しと
国道を外れて寂し山里に老人二人と老婆は五人
久々に妹来たり義弟は免許返納チャリで走ると
初霜に柚子を採ろうか採るまいかも少し待てと妻は言う
朧なる雲間の峰に一筋の月の光に友偲びおり
冬風に乱れる妻の白髪の撫でる姿もいと愛しけり





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